千手ゼミでは、2016年度も「裁判傍聴」を実施しました。通常取り扱っているのは民事法や企業法ですが、刑事事件を傍聴することで刑事法にも触れ法の全体像を知る機会とするとともに、裁判の雰囲気やその場でのやり取りを勉強の材料とすることで、手続の全体像や法律の果たす機能など、さらに学生達に学びを深めて欲しいと思い、実施しています。
道路交通法違反事件(3年生13名が傍聴)
被告人が事故を起こした後、車両が煙を上げる状態で乗り続け、さらにもう一つの人身事故を起こしてしまったという起訴事実が争われている事案。
見学時の手続においては、二つの事故の間で被告人がとった行動が、道路交通法上の「ひき逃げ」に該当するか否かが争点となっていました。
免許を持っている人は、道路交通法を全員一通り勉強しており、法律に親しみのない方にも理解しやすい事案であることが多いですが、今回の事案は複雑でした。
もっとも、現実の事件の「複雑さ」を目の当たりにできたのも、学生にとっては一つの学びだったかもしれません。学生達は教室で学んだ知識を駆使し、熱心にメモをとっていました。
これまでの見学では自白事件が多かったのですが、今回は一部否認している事件でしたので、被告人を守ろうとする弁護人と、それを切り崩そうとする検察官との間で、静かで淡々としていながらも激しい「争い」が繰り広げられるのを見学できました。
傍聴後、裁判官や検察官の先生が「質問コーナー」を設けてくださり、事件のこと等をわかりやすく解説してくださいました。
住居侵入窃盗事件(2年生15名が傍聴)
すでに服役した経験のある被告人が、再度窃盗をはたらき、公判にかけられた事案。ギャンブルにのめり込み、手元のお金がなくなると窃盗をはたらくという「常習犯」の事案であり、裁判例の中にも多く見られる事案のようです。窃盗の被害者が真夜中に突然家に入られたことで精神的なダメージをうけている等、若干悪質な事件であったようで、しかも再犯であったことから、検察官からは厳しい懲役刑の求刑がなされました。裁判官が、最後に被告人に厳しく反省を迫る場面も見られました。こちらの事件でも学生達は真剣にメモをとっていました。
「ドラマで見たような事件が現実に起こっていた」などの感想が学生からは聞かれ、事案の概要だけでなく、緊迫した法廷の空気のようなものも感じ取ってくれたようです。
「ものを盗んではいけない」ということは、誰でもわかっていることですが、なぜそれでも盗みをしてしまうのか。遊びやギャンブルの効用を全面的に否定はできませんが、一部にのめり込みやすいものがあり、のめり込むうちに「盗む」ことに対しても、違法性の意識が低くなっているのかもしれません。「限度をわきまえる」という理性的な態度の重要性を再確認できました。
今回は学期中に裁判見学を実施するチャンスをいただきましたので、該当学年のゼミ生をほぼ全員参加させることができました。
学生達には、法律の働き、裁判手続の流れはもちろんのこと、その背後に繰り広げられる社会の営みや、人々の様々な思いのようなものも感じ取り、「正義」「公平」とは何か、なぜ人は対立するのかなど、プリミティブな問題にも思いを馳せて欲しいと思っています。 (千手(社会環境学科教員))
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